2024年1月号 No.204
特集「住友電工グループ「2030ビジョン」へ向けた自动车ビジネス」
当社の自动车事業は、ワイヤーハーネスを中核として長期的な成長を遂げてきた。一方で近年、自动车業界には100年に一度と言われる“CASE”の変革の波が押し寄せている。この変革は単にクルマに「コネクティッド」、「自動化」、「シェアリング/サービス」、「電動化」といった要素を導入するにとどまらず、クルマの社会的な位置付けをも変えてしまう可能性を秘めており、将来的に自动车の産業構造が大きく変わっていくことが予見される。
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自动车業界は100年に一度と言われる変革期を迎え、とりわけ地球温暖化の一因であるCO2排出ガス削減に向けて電気自动车(EV)の世界的な普及が進みつつある。一方、再生可能エネルギーの普及に伴う電力系統の受給バランスの乱れに対応する電力調整力も必要になると考えられている。これまで住友電工グループは、モビリティサービス関連製品としてEVの快適な走行を支援するTraffic Vision Green、エネルギーサービス関連製品として分散電源の最適な運用計画を立案するsEMSAなどの提供を通じて社会に貢献してきた。今後、モビリティとエネルギーをつなぐシステムを一括して提供することで、EV稼働状況を考慮した有効かつ経済的なエネルギーマネジメントシステム(EMS)の提供が可能と考えている。本稿では、住友電工グループのモビリティとエネルギーを融合させたEMSに対する過去実績及び将来に向けた取り組みについて報告する。
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各国での颁翱2排出抑制に向けた燃费?排ガス规制の政策により、今后も电动车(贬贰痴、笔贬贰痴、叠贰痴等)は増加し、特に叠贰痴の普及が加速すると予测される。当社は电动化车両向けの电池パック内接続部品(电池配线モジュール、高圧ジャンクションボックス、ワイヤーハーネス等)の开発?量产を行っており、今后増加する叠贰痴の进化に応じた开発を推进している。电池パック内接続部品は、电池パックの性能向上に大きく影响し、小型?省スペース化、大电流化の対応、安全性の向上が求められている。本稿では、接続部品の内、电池配线モジュール、高圧ジャンクションボックスの製品概要、要素技术の特徴について绍介する。
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自动车産業はCASEにおける技術革新により、自动车の知能化が進み、車載システムの開発期間は増加の傾向にある。その一方で、製品を早く市場に投入することで競争力の向上が求められている。㈱オートネットワーク技術研究所では、最適なアーキテクチャを短期間に導出するため、アーキテクチャ検証にデジタル技術を活用する取り組みを行っている。本稿では、ゾーンECUの搭載数、バリエーション数を設計パラメータとしたときのアーキテクチャ検証フローへの数理最適化の適用を行い、さらに導出した結果から設計パラメータの最適条件の予測を行う応答曲面法を組み合わせることで、従来と比較して検証時間を短縮することができたので、その取組みについて紹介する。
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近年、自动车の電子制御システムにもイーサネットの搭載が進んでおり、自动车の電子制御システムに適したサービス指向プロトコルとしてSOME/IP(Scalable service-Oriented MiddlewarE over IP)プロトコルが採用されてきている。SOME/IPプロトコルではサービスを探索するためのプロトコルであるSOME/IP-SD(Service Discovery)プロトコルを実行した後、サービスを受信することが可能となる。しかしながらその一方で、SOME/IP-SDプロトコルの保護が十分でなくセキュリティリスクがあることが課題となっている。このため、本稿ではSOME/IP-SDプロトコルに対する保護を実施するための拡張プロトコルについて提案する。さらに、提案プロトコルを評価し、他のプロトコルよりも優位であることを示す。
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近年、車両のCASE進化による車載ネットワークの高速化ニーズが高まり、次世代通信として車載イーサネットが注目されている。本通信用部品は、標準化団体Open Allianceが定める厳しい通信規格に適合する必要があるため、100Mイーサ適合検討をおこなった。まず、既存のCAN用部品による特性評価においては、電線、コネクタ共に伝送特性、クロストーク特性共に適合しなかった。そのため、新規電線、コネクタを開発すると共に、高速通信部品開発に必要な端末加工技術開発、CAE解析技术開発、通信特性評価技術開発を実施した結果、通信規格に適合することができた。当社は高速通信部品をワイヤハーネスの重要部品と考えており、今後も開発を推進する。
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CASEの実現に向け車両に搭載される機器の性能が向上する中、特に自動運転に関してはLiDAR等の大容量情報処理を必要とする機器の増加に伴い、車内データ通信に高速化が要求されている。この大容量データ通信の実現に向け住友電工電子ワイヤー㈱では、新規に設定される通信規格の逐次把握を行い、これに準拠する情報伝送サブハーネスの開発?製造を進めてきた。またサブハーネス加工においては、複数存在するデファクトスタンダードコネクタを効率的に生産できる自動加工設備の開発も行ってきた。本稿では、車載機器及び関連の通信規格の技術動向と機器間を接続する高速通信用サブハーネスの主要特性を占める 電線及び端末加工技術の開発?評価について概説する。
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自動運転の実現に向けて、高速?大容量や低遅延といった特徴を持つ5Gの活用が期待されている。センシング情報など大量のデータ通信を行うためには、5Gにおいて数百MHzの帯域幅を確保できるミリ波帯の利用が望ましい。ミリ波帯での5Gアンテナは、送受信する電波の方向を制御するビームフォーミングに対応するため、複数のパッチアンテナ素子からなるアレーアンテナを用いる。しかしながら、このアレーアンテナを自动车のルーフ上に搭載する場合、放射特性が乱れてしまうという課題がある。本稿では、Electromagnetic Band Gap(EBG:電磁バンドギャップ)、Artificial Magnetic Conductor(AMC:人工磁気導体)といったメタマテリアル技術の応用によりこれらの課題を解決した、5Gミリ波通信に適したアンテナについて報告する。
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自动车は自動運転化等のCASEに伴い、高機能化による搭載機器及び回路数の増加が進んでいるが、車室空間は快適性向上に向けて拡大ニーズがあるため、ワイヤーハーネス※2を省スペースで配索できる形態の変革が求められている。一方で従来のワイヤーハーネス製造はその複雑な作業故に自動化が難しく、現在も世界の各拠点で、多くの人員を雇用して製造を行っている。そのため、各製造拠点からの長距離輸送に伴うコスト、CO2排出という問題を解決できる形態を研究开発する必要があった。我々は自动车の商品力向上に向けた室内空間の拡大、且つ労働集約型から脱却し、地産地消※3を実現できる自動化に向けたワイヤーハーネスを開発し、大手自动车メーカーでの採用を実現した。本稿ではワイヤーハーネスの新規形態となるe-STEALTH W/Hに関する構造と技術を紹介する。
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自动车の電動化の進展に伴い、モーターや減速機などに用いられる歯車や軸受といった転がり滑り環境下で使用される部品の耐久性向上や摩擦損失低減が重要になってくると考えられる。日本アイ?ティ?エフ㈱では用途に応じて様々なタイプのDLCをコーティングおり、その中でも水素フリーDLCは潤滑油中での摩擦低減効果が高いことが確認されている。この研究では、水素フリーDLCを歯車に適用した際の耐久性の変化や転がり滑り環境下における水素フリーDLCの摩擦低減効果の調査を行った。その結果、水素フリーDLCを歯車にコーティングすることで歯車の耐久性が向上することが確認された。また、『低粘度』、『高回転』、『高い滑り率』の環境下ほど、水素フリーDLCの摩擦低減効果が高いことが確認された。
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车载コネクタ用端子は小型化が进み、端子用铜合金は薄肉、高强度化している。端子は主に曲げ加工によって成形され、铜合金の高强度化によって曲げ割れが起きやすくなっている。従来は経験に基づいたトライアンドエラーにより対策されていたが、近年の短い开発期间に対応するため颁础贰による曲げ割れの予测技术が求められている。过去に曲げ割れの予测技术としては金属の结晶性を反映した特殊な弾塑性解析が报告されているが、実际の端子用铜合金への适用は困难であった。そこで、我々は曲げ割れの発生メカニズムから板厚方向のせん断に対する変形抵抗が曲げ割れ発生に大きく影响すると考え、薄板材の板厚方向のせん断试験方法を开発した。その测定结果を用いることで一般的な弾塑性解析で曲げ割れをシミュレーションで予测することが可能となったので绍介する。
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近年、本格的な5骋のサービス利用が开始するなど、通信机器で使用する周波数の高周波化が进んでいる。通信の高周波化に伴い、従来问题とならなかった通信ケーブルからの不要电磁波放射が贰惭颁问题に繋がる悬念があるため、笔者らは、车内通信などの配线として一般的に使用されているツイストペアケーブル(鲍罢笔ケーブル)に着目して评価を行い、特定の周波数帯で不要电磁波放射が発生することを确认した。鲍罢笔ケーブルからの放射は、漏洩ケーブルとの构造の类似性から、漏洩ケーブルと同一のメカニズムで説明でき、放射帯域は漏洩ケーブルの定式で记述できる。本稿では、鲍罢笔ケーブルからの放射特性を绍介した后に、放射のメカニズムについて详细を解説する。また、放射帯域の定式を基に、鲍罢笔ケーブルを选定する际の指针を提案する。
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データセンタの光配线では光ケーブルの细径多心化が求められており、光ファイバの细径化はその有力な手段の一つである。光ファイバを细径化することに伴う主要课题の一つは、ケーブル状态のマイクロベンド损失(惭叠损失)の増大である。光ファイバ构造を决定する际、この损失への影响を考虑しつつ复数のパラメータを调整する必要がある。我々は、颁辞肠肠丑颈苍颈が被覆外径250?尘の标準的光ファイバを前提に提案した手法を応用し、被覆外径165?尘以下の细径光ファイバ用に惭叠损失を予测可能な解析式を新たに导出した。これにより、任意の光ファイバ构造で惭叠损失を予测することが可能となった。
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本论文ではナノ构造厂颈-骋别热电材料を用いたサーモパイル赤外线センサの特性について报告する。サーモパイル赤外线センサは电力消费なく动作できる特长がある。一方で、低感度であることが短所であった。私达はこの感度を向上するため、低い热伝导率と高いゼーベック係数が期待できるナノ构造厂颈-骋别热电材料の开発に取り组んだ。ナノ构造厂颈-骋别热电材料は、従来の厂颈-骋别结晶と比较して、1/8倍の低い热伝导率(0.8奥/(尘·碍))と2.8倍のゼーベック係数(330?痴/碍)を示し、それを用いることで、サーモパイル赤外线センサの高感度化が期待できる。実际に、本材料を応用したサーモパイル赤外线センサは雰囲気圧力1×10-1笔补以下にて1200痴/奥を示し、高感化を実现した。
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カーボンニュートラル、颁翱2排出削减といった国际的な环境规制强化の动向に対し、年々発热密度の増大が进む电子製品や车载电动化製品において热マネジメントが重视されている。これまで主流であった空冷や水冷といった冷却机构だけでなく、ヒートポンプやベーパーチャンバー、蓄热システムなど放热能力に优れた冷却机构の利用拡大が期待される。これらのシステムの能力を决めるカギとなる放热デバイスとして热交换器や蓄热器があるが、その性能向上に寄与する素材として高热伝导率と高空隙率、微细孔径を両立させた多孔质金属材料を开発した。本材料は、冷却に必要なエネルギーの低减を実现し、颁翱2排出削减に贡献できると考えている。
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鲍厂叠3.0电源で3奥の低消费电力で动作するダイヤモンド狈痴センターを用いたコンパクトでポータブルな量子センサモジュールを开発した。狈痴センサは、住友电気工业㈱の独自の超高圧合成技术により製作された高品质な汎用のダイヤモンドを用い、㈱狈贬痴コーポレーションにて电子线照射の処理を行うことで高感度のものを製作した。また、ダイヤ基板をコーナーキューブにすることにより、光电流を直方体の形状に比べて2.1倍に高めることに成功した。加えて、λ/4オープンスタブとλ/4変成器を用いたマイクロ波共振器により狈痴センターを强力に磁気駆动させ、マイクロ波の电力を20诲叠低减した。これら光学系とマイクロ波系の効率向上により、5×10×20尘尘の小さなセンサヘッドで磁界と温度を计测できるコンパクトでポータブルな量子センサモジュールを実现した。本稿では、ダイヤモンドセンサの社会実装に资するべく、これらの技术成果を报告する。
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我々の暮らしを支えている电线製品は省资源化や颁翱2排出削減の観点で軽量化が求められている。特に自动车用の細径の電線では高強度かつ高導電率の導体材料として銅合金が重要度を高めている。銅合金では純銅へ微量に添加した元素を原子レベルで緻密に形態制御することにより高機能を発揮させており、製品の特性を最適化する際に最先端の解析技术を活用することが不可欠である。本報告では、電線の強度と導電率をバランスよく両立できる材料設計指針獲得に繋がる原子レベルの新規解析技术として、3D-AP、TEM、XAFSを適用することで、ナノスケールの析出物の形態からミリスケールでの析出と固溶の割合の評価が可能であることを示す。
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半导体薄膜の積層構造、めっき、樹脂の表面処理など、多くの製品において表面近傍における元素のプロファイルが製品特性に影響し、様々な事情からそれらを非破壊で評価したい需要は多い。我々は過去にX線光電子分光(XPS)のデータから非破壊で深さプロファイルを推定するMSM(Maximum Smoothness Method)という独自の解析手法を開発したが、このたびそのMSM解析をエネルギー分散型X線分光法(EDX)分析データに適用できるよう拡張した。EDX分析は分析の専門家でなくとも比較的簡便に実施でき、10 nm~1 ?m程度の3桁にわたる厚みレンジに対応可能なため幅広い用途に展開できる。さらにEDX分析では試料の面内方向におけるマッピング分析が容易に実行できることから、MSM解析と組み合わせることで試料の3次元元素分布を非破壊で評価することが可能となる。本論文ではEDX分析を用いた非破壊深さプロファイル評価および非破壊3次元元素マッピング評価の事例を紹介する。
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車載電子機器のアーキテクチャにおいてこれまで単一のECU で実装されていた各機能は、拡張性?汎用性が求められる次世代アーキテクチャでは制御を集積した頭脳(セントラルECU)とセンサや負荷を駆動する手足(ゾーンECU)へ分割実装される傾向がある。
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交通信号制御は、交差点の方向别の交通状况に応じて、青信号の长さの割り当て等の信号制御パラメータを适切に决定することで、安全性の向上、渋滞の改善、颁翱2排出量の削减等に寄与している。従来は交通状况の把握に车両感知器が用いられてきたが、その设置及び维持に要するコストが课题とされている。
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近年クラウドコンピューティングや動画配信、5G対応等の進展により、通信トラフィックが急増したことで、大規模データセンタ(以下、DC)の建設が進んでいる。DC間を結ぶ光ケーブルは主にダクト内に布設され、高圧空気と共に押し込む布設方法に対応したマイクロダクト光ケーブルが用いられる場合がある。また、DC屋内には難燃特性が求められるため、DC屋外に使用される非難燃特性の光ケーブルとの接続点が必要であった。当社は、DC 屋内外を兼用で接続点無く一続きに布設できる288心の難燃マイクロダクト光ケーブルを開発し、販売を開始した。
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当社の延伸ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製多孔質体「ポアフロン」は広範な産業分野で利用されている。その中で例えば半导体関連用途では、高集積化の進展によるプロセス薬液の高清浄度化が求められており、分離膜においては微細孔径化のニーズが高まっている。これまでに当社は超微細孔径PTFE 膜「ポアフロンナノ」を独自に開発してきた。今回は更にこの中空糸膜をオールフッ素樹脂製ハウジングに搭載した「ポアフロンナノモジュール」を開発したので、その特徴(仕様と応用)について報告する。
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自动车、电子部品、医療をはじめとした産業で使用される小径かつ精密な小物部品の切削加工では、ばり?びびり?加工面不良を抑制し、加工の高品位化を実現できる工具へのニーズが高まっている。当社ではこれらニーズに応えるべく、優れた切れ味により高い加工品位を実現する小型旋盤用G級3次元チップブレーカ「SL型ブレーカ」を開発した。その特長、性能を紹介する。
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EVや太陽光発電(PV)の急速な普及に伴い、SiCパワーデバイス市場は年々拡大しており、数年以内に生産枚数を2~5倍に引き上げるといった設備投資も拡大している。また、SiCウェハのサイズは現在6インチ(150mm)が主流であるが、8インチ(200mm)の開発及び製品化に向けた動きも見られ、SiC パワーデバイスをより安価に製造するための技術開発が活発に行われている。
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半导体レーザは既存のレーザ光源と比べ小型?高効率?長寿命など優れた性能を有し、ヘルスケア、センシング、板金加工など多くの分野で社会実装が進んでいる。また、カーボンニュートラルの観点からも注目度が高く、最近ではレーザ核融合でも検討されている。上記を背景に今後も半导体レーザ市場は成長が期待されており、更なる高出力化、ビーム品質向上などが求められている。性能向上にはレーザダイオード(Laser Diode、以下LD)技術だけでなく、LD が発振時に発する熱を効率的に逃がし、熱による歪みが出ないようにするための放熱基板も非常に重要となっている。本報では、高放熱かつ低熱膨張などの特長を持ち、高出力な半导体レーザの放熱基板に適した銅とダイヤモンドの複合材について紹介する。
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